幸せって⁈




同窓会 会長 寺田 朗子
 

 「バイザスパークリング安芸ウェイブス」と緑の丘のマリア様に歌いながら、毎朝娘をあの散髪店まで送ります。「今日も楽しく一日を過ごし、無事に帰ってきてね」と心の中で、「いってらっしゃい」と声を出す。
 三十八年前の秋、待望の第三子がなかなか生まれ出ようとせず、やっとの思いで生まれてきた子は元気がなく、泣き声を上げる力もない女の子。やがて、その子には先天的に異常があると宣告を受ける。あの頃の私は、涙の爆弾を抱え一触即発・世界一哀れな母親。
 でもね、もう元には戻れない、現実をしっかり受け止めなければいけないと思えるようになるのに何年かはかかりましたが、それよりも「じゃー、今何ができるの?」と考えるようになりました。様々な岐路に立った時、その時の自分なりの最善を選んできました。だから、反省はするけど、後悔はありません。 障害の子供を持つことは、世界一不幸だと思ったこともありました。今は、違います。今まで見えなかったものが見え、聞こえなかったものが聞こえるのです。障害のある人が精一杯生きる姿。それを支える親御さんの強さ。人の優しい言葉、ちょっと厳しい言葉。
 あるアメリカ人の神父様の言葉に「神様は嬉しいお恵みと,嬉しくないお恵み、どちらも私達に下さるのです。」できれば「うれしくないお恵み」は、頂きたくありません。でも、それもお恵みなのです。「嬉しくないお恵み」と思った娘ですが、今は掛け替えのない「嬉しいお恵み」とはっきり言えます。
 先週のミサのお説教で、神父様は「今つらくても、自分にできることを精一杯して、あとは、神様に委ねて、心穏やかに過ごしてもいいと思います」と言われました。
 そうですね、シェイクスピアではありませんが、幸は、不幸。不幸は、幸⁈

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