近況 ―日本ポー学会設立について―
伊藤詔子

 2007年の同窓会に出席させていただき、懐かしい皆様や先生方にお会いし、コーラス部の活動にも触れ楽しかったです。卒業後も清心spiritを忘れず、日々の暮らしに生かしておられるご様子に感銘を受けました。そこで私も少し近況をご報告させていただきます。
  2年前、4半世紀勤めた広島大学を退職後、松山大学に勤務し、続いてアメリカ文学とアメリカ研究を中心に研究教育に当たっています。学会活動も続いていまして、アメリカ学会や英文学会など内外の多くの学会に参加していますが、松山で特に2つの会の事務局を引き受けて代表や事務局長を務めています。1つは清心でもよくテキストにして皆さんにも人気のあったエドガー・ポー学会で、今ひとつは、環境・文学・文化の関係を研究するエコクリティシズム研究会です。活動についてはそれぞれホームページを覗いてみてください。ポーは来年生誕200年を迎え日本で最もポピュラーな外国作家ですが、ホ-ソーン、ソロー、メルヴィルらと違い日本に専門学会がなかったので、これから学会を研究発信拠点として築いていきたいと思います。
  ところで「ニューヨーク・タイムス」2008年4月4日号一面トップは、“81% in Poll Say Nation Is Headed on Wrong Track”とアメリカの現状への国民の世論調査の結果を報じています。2002年は35%、1年前は69%からの急上昇であり、90年代以降最悪でした。こうした状況はアメリカを研究しているものにとっても深刻な事態です。国の人気がないときに、その国の文学のよさを学生に伝えるのは困難ですし、今アメリカ文学は主軸を失いグローバルに越境を繰り返すとともに、その特質も不鮮明になっています。けれども考えてみればアメリカ作家はいつも自国のありように批判的で、特にポーは興りつつあったアメリカ民主主義の将来を危惧し、ひたすら旧世界を舞台にアメリカ文学を展開しました。ポーの世界文学としての普遍性、最近の言葉で言うと、ユビキタス・ポーが注目されているのも文化のグローバリズム現象の一つかもしれません。
 以下がこの2つの学会のアドレスや機関誌なので、興味のある方はいつでもお訪ねください。また皆さんとお会いし、時代とともに成長していく清心spiritに触れたいと希っています。それまで皆様お元気で!
  日本ポー学会とニュースレター http://www.poejapan.org/
  エコクリティシズム研究会『エコクリティシズム・レヴュー』
      http://ns1.shudo-u.ac.jp/~shiotah/ecoc.html

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